ロースターコラム
今回は、珈琲を淹れるお湯の温度についてです。
この話題は本当によく聞かれます。
通常お水は火にかけたり、IHなどで熱を加えると沸騰します。この沸騰している温度のポジションを「沸点=100℃」と言います。(もっと詳しく言えば、標準沸点(外圧が1気圧とした時。))
ペーパードリップを行っているロースターでは、沸騰状態になったら火から離し、沸騰が落ち着いた状態でコーヒーの抽出を始めます。この時の温度は96℃くらい。そしてコーヒーの粉を蒸らしている間にもう一度沸点まで温度を上げて行きます。
ドリッパー内のコーヒー粉の蒸らしが終わったら、沸騰が落ち着いた状態のお湯を淹れ、そのまま抽出を続けて行きます。(コーヒーを淹れ終わるまで96℃~85℃くらいの温度帯を使っていることになります。)これがロースターの基準となります。
しかしこれはあくまでも基準であり、本当に大切な事は「飲み手が心地よいと思うコーヒーを常に出せるか」という所です。
例えば、コーヒー豆が浅煎りの場合、しっかりとしたコーヒーの風味を引き出すために高い温度で抽出を行い、また深煎りの場合は蒸らしている時にあえて沸騰させないで、温度が下がり続けている状態のまま抽出を行っています。(とげのある苦みを抽出しない様に)
またその日の気温や季節によっても高めの温度で抽出を行うか否かを変えています。
なぜなら、気温が高い日に熱いものを口にした時に感じる感覚と、寒い日に熱いものを口にした感覚は大きく異なるからです。
コーヒーを口にした瞬間、どのような状態が一番心地よいのかここが一番大切だと考えています。
人の味覚は日によって変わるものです。体調が変化する様に。
コーヒーの味わいは、コーヒー豆の煎り方や、粉の量、粉の挽き方、お湯の温度、抽出方法や手順と様々な条件が一致したときにはじめて完成します。あらゆる条件の内ひとつでもかけてしまえば味を損なう事に繋がってしまいます。
僕たちでも常に同じ味わいを提供出来ているかどうか。そこは本当に悩ましい所でもあります。
ただ一つだけ自信を持って言える事。「飲み手を喜ばせたい」その思いのもとコーヒーを淹れています。
これから先、あらゆる場所で簡易的な人の手が加わらないコーヒーを飲む機会は益々多くなりそうです。
美味しいコーヒーを淹れる最大のポイントは、「美味しいコーヒーを淹れる必要最低限の条件+人の手」なのではないのでしょうか。
手仕事は残していきたいものです。