著者:デカフェのすすめ編集者
コーヒーを飲むとヒトはどうなるの?
コーヒーを飲むと、その中の成分の影響によりさまざまな作用を体に引き起こします。それは、ひとりひとりの耐性にも大きく左右されます。その作用は「急性作用」と「慢性作用」というように分けられます。
急性作用
A) 中枢神経興奮作用 (眠気覚まし、計算力記憶力の賦活化、不眠、不安) 活性本体:カフェイン
B) 骨格筋運動亢進作用 (疲労感の回復、震え) 活性本体:カフェイン
C) 胃液分泌促進 (消化促進、胃粘膜障害) 活性本体:カフェイン、クロロゲン酸類、メチルピリ二ジウム※A
D) 利尿作用 活性本体:カフェイン
E) 代謝促進 活性本体:カフェイン
F) 血圧上昇 活性本体:カフェイン
G) 血中コレステロール増加 ジテルペン化合物(カフェストール、カウェオール)※B
H) 大腸ぜん運動の亢進(便通改善、下痢)活性本体:カフェイン以外
※A メチルピリジニウム・・・メチルピリジニウムとは、ピリジン環にメチル基が結合した第四級アンモニウムカチオンのことです。コーヒー製品に含まれており、焙煎前のコーヒー豆には存在せず、焙煎によってトリゴネリンから生成されます。特に大腸がんに対する抗発癌物質としての性質を持つ可能性があり、研究が進められています。深煎りほど増加すると言われています。(深煎りの方が浅煎りよりも胃への負担が少ない)
※B カフェストール、カウェオール・・・カフェストールとカウェオールは、どちらもコーヒー豆に含まれるジテルペンという脂溶性の化合物です。カフェストールはコレステロール値を上昇させる可能性がある一方、カウェオールには抗炎症作用や抗がん作用の可能性も示唆されています。これらの成分は、コーヒーの淹れ方によって抽出量が異なり、特にペーパーフィルターを使用しない淹れ方では多く抽出される傾向があります。
慢性作用
慢性作用とは、コーヒーを長期間摂取し続けた結果の依存性から引き起こします。コーヒーには軽度の精神依存性があり、飲用者は習慣的に常用する傾向があります。これはカフェインによる影響が大きいと言われていますが、必ずしも摂取量が関係しているとは限らないようです。コーヒーは、アルコール・タバコ・麻薬などとは異なり、耐性を生じにくいと考えられており、下記のような身体的な症状が現れることは少ないとされています。(精神的な症状の頭痛や倦怠感、集中力低下などが出ることがあります)
●アルコールやタバコ、麻薬など、断つことで現れる離脱症状とは・・・
身体的な症状:手の震え、発汗、吐き気、不眠、高血圧など、個人差はありますが、様々な離脱症状が現れることがあります。
精神的な症状:不安、イライラ、焦燥感、不眠、集中力低下など、精神的な症状が現れることもあります。
コーヒーの栄養学
コーヒーを「食品」として栄養学的に見ると・・・
コーヒーとカロリー
コーヒーのカロリーは低く、ブラックコーヒー1杯あたり約4kal程度と言われています。カロリーが気なる人にとっては素晴らしい飲み物と言えますが、ミルクやシュガーを加えて飲むことはなるべく控えたいところです。
カフェインの持つ代謝促進作用
カフェインが中枢神経に作用して、交感神経系を興奮させることが、カロリー消費の主な原因と考えられています。また上記のことから「コーヒーはダイエットに有効」とされているが、コーヒーの飲用の効能は、痩せ身・肥満・男女の違い、運動前後などさまざまな条件の違いから、確実性は低いと言われています。大切なことは、カロリー摂取のバランスや適切な運動による代謝促進を意識するという、日頃の体調管理が重要ということです。
カフェインは運動パフォーマンス向上に効果があるとされています。特に、持久力や敏捷性を高める効果が期待でき、30分から2時間持続する運動で効果を発揮しやすいと言われています。カフェイン摂取は、脂肪の動員を増やすことでエネルギー源として利用しやすくし、運動効果を高める可能性があるようです。

カフェインと運動の効果への作用
パフォーマンス向上
持久力、筋力、スピードなど、有酸素運動と無酸素運動の両方のパフォーマンスを向上させる可能性があります。
脂肪燃焼促進
運動時の脂肪の利用を促進し、脂肪燃焼効果を高める可能性があります。
疲労感軽減
運動中の疲労感を軽減し、集中力を高める効果が期待できます。
グリコーゲン再合成促進
運動後の炭水化物摂取と併用することで、筋肉のグリコーゲン再合成を促進する可能性があります。
筋肉への影響
カフェインは筋肉の緊張を高め、場合によっては筋肉のけいれんや不随意な収縮を引き起こす可能性があります。
利尿作用
カフェインには利尿作用があるため、運動中の水分補給に注意が必要です。
運動前後のカフェイン摂取のタイミング
運動の約30分前
運動パフォーマンス向上の効果を期待するなら、運動の30分前に摂取するのが効果的とされています。
運動の約1時間前
カフェインの効果が最大になるタイミングは、摂取から45~60分後と言われています。
運動中
長時間運動をする場合は、運動中にカフェインを補給することも有効です。
注意点:
- カフェインの摂取量には個人差があります。過剰摂取は、不眠や吐き気、不安感などの副作用を引き起こす可能性があります。
- カフェインに敏感な方は、摂取量を調整するか、カフェインレスの飲み物を選ぶと良いでしょう。
- 運動の種類や強度、個人の体質によって効果は異なります。
- カフェイン摂取は、あくまで運動パフォーマンス向上の補助的な手段として考え、バランスの取れた食事と適切な運動を心がけることが大切です。
- カフェインを運動に取り入れる際のポイント:
- 運動前にコーヒーを飲む場合は、ブラックコーヒーがおすすめです。砂糖やミルクを加えると、脂肪燃焼効果が弱まる可能性があります。
- 運動強度や目的に合わせて、カフェインの摂取量を調整しましょう。
- カフェイン摂取と合わせて、水分補給をしっかり行いましょう。
- その他:
- カフェインは、運動意欲を高めるアドレナリンの分泌を促進する効果も期待できます。
- カフェインは、筋肉細胞内のカルシウム放出を促進し、筋収縮をスムーズにする効果も期待できます。
その他カフェインの作用
カフェインは、中枢神経を刺激して覚醒作用や集中力向上、疲労感軽減などの効果をもたらす一方で、過剰摂取による不眠や不安、動悸などの副作用も引き起こす可能性があります。
カフェインとアデノシン※Dは、睡眠と覚醒のバランスに関わる重要な物質です。カフェインはアデノシンの働きを阻害することで、眠気を覚まし、集中力を高める効果がありますが、過剰摂取は不眠や不安などの原因になる可能性があります。
※D アデノシンは、生体内で広く用いられる物質で、特に心臓や脳、肝臓などの血管拡張に関わる成分として知られています。また、睡眠や覚醒の調節、心筋保護、育毛効果など、様々な生理活性作用を持つことが知られています。

コーヒーによる栄養吸収の阻害
コーヒーに含まれる「クロロゲン酸類」が、鉄イオンやチアシン(ビタミンB1)※C と結合し、栄養吸収の阻害につながるとされています。(食事と一緒にコーヒーを飲用した場合)健常者にとっては、問題のない程度の作用ではあるが、なるべく食間に飲むことをおすすめします。
※C 「チアシン」という名前で一般的に知られているのは、ビタミンB1の化学名である「チアミン」のことです。ビタミンB1は、糖質をエネルギーに変える際に重要な役割を果たす水溶性ビタミンです。
カフェインの安全性
カフェインが医薬品であり毒性が高い「コーヒー有害説」として用いられるその根拠とは・・・。
カフェインを過剰摂取すると、頭痛や不安・手の震えなどの急性の副作用が現れることがあり、さらに過剰摂取すると生命に関わる場合があると研究では言われていますが、個人差も大きく関係してきます。
治療という考え方
カフェインは、日本薬局法に収載された医薬品であり、約11グラムが半数致死量と推定されています。これは、コーヒー1杯のカフェイン量を約60mgとすると、約183杯分に相当します。この数値は、医薬品の中では比較的に高い種類に属するため、高濃度高容量のカフェインを含む(0.5%以上または、一部容器中に0.25mg以上)など定められた基準値を超える医薬品については、薬事法上の劇薬として扱われています。しかしこれは、あくまでも高濃度高容量を含む「医薬品」とされています。
医薬品の場合、「極量」という治療上の有用性と副作用の両方に考慮した「ほとんどの人にとって安全かつ適正な利用の上限値」が指標として設けられていて、カフェインの場合、一回極量が0.5g、1日極量が1.5gとされています。
眠気防止を目的とした場合のカフェイン含有製剤(眠気防止剤)については、1回摂取量200mg、1日摂取量500mgを上限とされ利用されています。これが治療という指標に当たるとされています。
食品そして嗜好という考え方
コーヒー1杯あたりのカフェイン量は使用する粉の量によりばらつきはありますが、およそ30〜150mg程度です。これを元に考えると、1日3杯〜4杯程度であればほとんどの人にとって安全かつ適正の量と言えます。
最後に、深煎りの方がカフェインが多い?
コーヒーの生豆(焙煎豆)には、数多くの成分が含まれています。その主な成分として下記のようなものがあります。この成分には、焙煎によって減少・消失するものとあまり変化しないものがあります。

結論:浅煎りでも深煎りでもカフェイン量は変わらない!
カフェイン(0.6~1.5%) 焙煎による変化はなし
クロロゲン酸類(6.2~7.9%) 焙煎により減少
小糖類(5.3~9.3%) 焙煎によりほぼ消失
多糖類(37~46%) 焙煎による変化はなし
アミノ酸(0.4~2.4%) ほぼ消失
タンパク質(~12.4%) 焙煎による変化はなし
脂質(10~16%) 焙煎による変化はなし
灰分(~4%) 焙煎による変化はなし
これらの成分の中でも、「小糖類」「アミノ酸」「クロロゲン酸類」は焙煎による風味の形成に重要な成分とされています。上記のように、カフェインの成分量は焙煎による影響はないことが分かります。